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2003年5月
CMのちから
学園長 荒井裕司

 6月からあの「千と千尋の神隠し」の宮崎駿監督の作ったCMがTVで流れるという。ベースになっているのが昭和30年代の日本の風景だという。そのころ私は小学生から高校生の時代で、
昔懐かしい風景がいろんな所に出てくるんだろうなと思う。
大家族のもの、自然あふれるもの、心あたたまるようなもの、生き物がいっぱいのものなどだろうなとイメージがかきたてられる。
「となりのトトロ」などの作品と風景が重なってしまうからだ。

 5月に行われた1年生の田植えで、昔を思い出してしまった。
生徒達は田んぼに入って、「キャー、何か臭いよ、臭い!」 「かえるがいるよ〜。小さい虫やタニシもいる〜。」と声をはり上げていた。
その光景は私の子どもの頃と似ていた。
農薬もない時代、田んぼには小さな生命があふれていた。
有機肥料は牛馬の糞を使い、田んぼの中は独特の匂いであふれていたし、鳥や小動物もみんな共存していた。
そんな懐かしい光景はもう戻ってこないと思っていたが、このごろ少しずつ増えてきたようだ。

 こんな臭いがいたるところにあって、動物や鳥達が走り回る風景がどこかにあったなァと思い出すと、それはラオスになった。
農薬は一切使わず焼き畑農業(自然破壊、環境破壊になっていることも事実だが・・)で焼いた野原の草木の灰の中に種を植えて米や野菜を作る。
あの米で炊いたご飯がなんでこんなにおいしいのかと思い、たくさん買って帰国したことを思い出す。それはまぎれもなく自然が生んだ有機農法の味だった。
朝起きれば牛や豚が、エサ場に移動していく。
ニワトリや他の動物も買ってに飛びまわっている。
村中動物ったいの糞の臭いがたちこめてはいるが、なんともすがすがしい朝だった。
家族や村人たち「生きとしいけるもの」が手をつなぎ合い仲よく生きている。
そのシーンは間違いなく日本の昭和三十年代と重なるところが多いと思う。

 日本は今、言うまでもなく大変な時代を迎えている。大不況でもある。
今までの価値観が通らなくなって、考え方や生き方も買えていかなければならなくなったといわれている。でもまだ高度経済成長時代やバブル時代の遺産が色濃く残ってたりする。消費大国日本の名残は賃金業界のCMがやたらと多いことでわかる。
金にマヒした多くの日本人をうつしだす。はっきり言っていい感じではない。

 宮崎作品のCMがこれらのCMの中に割って入っていったら、皆どんなにか救われた思いをするにちがいない。
郷愁にひたる人、新しい家族の形を知る人、環境を考える人、自然を想う人、癒しを感じる人、夢を感じる人、生きるエネルギーをもらう人。こんなに大きな影響を視聴者に与えるCMは今までなかった。
ありがたいことでもあるし楽しみでもある。

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