 ◆オルタナティブなスクールを求めて
転編入生が多くなって来た。それ自体私は「結構いいこと」と思っている。別の言い方をすれば、オルタナティブになって来たとも言えるからだ。日本の高校中退者は全国で十万人といわれ、不登校の子どもたちと合わせて2%強といわれる。アメリカは12%に達するが、さしたる社会問題になっていない。「自分に合わない学校・情報と違っている学校なら、進路変更をし直しすればいいじゃないの。もっと自分に合ったステキな学校を捜しなさい。」となる。無責任のようだが、子どもたちにとっても家族にとっても、プレッシャーは少ない。そのかわり責任は自分がキッチリとるという考え方もその中に含まれる。日本よりかなり先を行っている。
日本の転編入は、かなりせっぱ詰まっている場合が多い。子ども達は悩んだり苦しんだり、自信を失って、親に相談するが、なかなか理解が得られない。子ども達に笑顔は見られず、伏し目がちの生徒も多い。これからの自分の人生がもう断ち切られたように感じている子もいる。私はそうした子どもたちにいつも花まるをあげている。帰ったあと私の判断でつける「合否」の欄に、子どもたちを目の前にして花まるをつけてやる。「大丈夫!深刻にならなくていいよ。いつでも、新しいスタートがきれるんだから。」と言いながら書いてやる。たいていの子はうれしそうな笑顔を見せる。失敗のない人生なんて無いし、子どもたちは個性が千差万別で、日々成長している生命体といえる。学校だってそうした子どもたちに合わせ、有機的に機能する生命体と言える。入学したら友人と出会い、先輩と知り合い、教師と関わり合う。そこで何を得るかが大事なのだ。従って入学前の失敗や成績や学校がどこだなんてことは問題にならない。
花まるをつけると皆、嬉しそうになる。花まるには人を元気にする不思議な力があると思うが、なかなかうまく使われてはいない。
◆沖縄の花まる高校生
今年度の修学旅行は沖縄。6日間ともピーカンに晴れた。台風と台風の間に組んだ日程は見事の一言だ。普通の修学旅行なんてするつもりはないので、新しい企画をいくつか盛り込んだ。一つは民泊。その地方の文化や、人情を知るにはこれしかない。海外でも同じだ。もう一つは現地の高校生との交流だ。両方とも人と人とが本音でふれ合うことを学ぶ。特別な知り合いもいないから最初に県庁の門を叩いた。
県からの紹介だからといっても現場はそんなに甘くはない。夜中まで動いて頼んだ結果、「こんな熱心な学校なら協力してやろう」ということで事務局の若者たちが必死で幹部を口説いてくれた。恩納村商工会がはじめて高校生の民泊を受け入れてくれたのだ。その説得の様子をあとから聞いてよけいうれしくなった。高校の交流会の方も断られ続けた。それでなくとも毎日の多忙な日常や行事の中、新しい企画を盛り込むのは手間ひまがかかる。自分たちのことを考えればよく解かる。考えるだけでもゾッとする。そんな中、我々の熱意を受けとめてくれた高校があった。今、前向きに高校改革を断行している県立のM高校だ。現地の高校との交流は沖縄では初めてという中、実に楽しく有意義に行われた。その力の入れようは、県庁から前もって調査に3人が来たり、別の日にM高校から見学に2人の先生がやって来たことでもわかる。M高校は沖縄でも最底辺校の一つだ。学校は荒れ、生徒たちは自信を失い、毎年入学者の半分は退学してしまう。この学校の改革に何人かの先生が立ち上がった。「学力だけが人格を決める訳じゃない。それぞれ持っているいい物を見つけてやって、それをとことん伸ばしてやろう」と考え、実行に移した。自信を失っていた生徒たちも自信をつけだし、個性や潜在能力を見つけては成長するようになった。その結果、全国の写真コンクールで優勝したり、美術・工芸・文芸・スポーツなどで入賞する生徒たちでいっぱいになり、学校が生き生きしてきた。この裏には先生たちが、それぞれの生徒たちの持つ良いところを見つけて褒めてやり、○×じゃなく花まるをつけて激励したことによるという。
私たちが訪問したその日、沖縄の戦争を考える「慰霊の日」の行事を双方の高校生が共同で行った。自分を見つめ、生き生きと輝きだそうとする、花まる高校生たちが集結した。このことは新聞やTVを通じて沖縄中に知らされた。
◆花まる家族と花まる学園
理想的な子どもを求め続ける親や教師は、常に子どもを減点法で見てしまうという。情報量が増えるに従って、他人の子どもの良いところだけが目につく。我が子を見ると限りなく不安が高まって、「なぜこんなことができないの?」「どうしてこんなことがわからないの?」となってしまう。しかし、子どもは生まれて何もできない時点を原点とするなら、今は花まるだらけになる。笑顔1つにも幸せを感じさせてくれる。「これから伸びそうな芽がいっぱいある」と加点法で考えると気持ちも楽になり、明るくもなる。学校も同じことがいえる。入学時の期待や喜びよりも、泣き笑い、悩み、苦しみ、様々な失敗をのり越えて、卒業した時の「花まる一杯の満足感」を大事にしたい。 |