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2004年8,9月
アテネ、その次
学園長 荒井裕司

◆大成功のアテネ五輪。
 アテネのオリンピックはテロリストによる襲撃も無く無事に終った。関係者ばかりでなく、世界中が胸をなで下ろした。
 選手の活躍に涌きに涌いた日本だが、その裏には、国の強力なバックアップ体制があったのだと新聞が伝えた。それぞれのスポーツの特徴に合わせた体育施設や指導体制が効果を表わしたという。それならば、「次のオリンピックでも同様の金メダルラッシュになるかも」と思うと何とも心強くなった。何せ次回は中国の北京だからだ。

◆中国の現代事情。
 7月のサッカーのアジア選手権での中国の観衆はひどかった。「民度が低い」とは石原都知事の言葉だが、それと同じような体験を私は中国で何度となく体験している。

 7年程前、大学関係者の招待で、中国東北部を訪問した。瀋陽(東北部最大の都市。人口600万人)から大連までの500kmの道のりを8時間もかけてワゴン車で走った。午後早目の出発が、道路事情が悪く、ホテルに着いたのは夜10時を回ってしまった。高速道路なのにサービスエリアは閉っていて、食事にありつけないため、ホテルの食事に期待した。大連のトップクラスのホテルだけあって日本食の看板を見た時には、総勢の9人は色めきたった。先に荷物を置いた4人が、レストランに入り、目ざとくカレーライスを注文した。カレーライスが運ばれて食べ始めたところに遅れて5人がやって来た。いい匂いと久しくありつけなかった日本の味を求めて、「俺も俺も」と注文した。ところがボーイがひき下って30分待っても運ばれて来ない。しびれを切らした1人が、ボーイを呼んで尋ねると、「もうご飯が無いのでできません」という。「それなら何故そのことをきちんと伝えに来ないのか」とボーイを責めた。代役のスパゲティーやらで胃袋を満たすことはできたが、あのボーイたちの態度には納得ができず、レジでそのことを抗議した。「こんなサービスは最悪であること。ホテルだけの問題ではなく、中国人の恥であることなどなど。」責任者らしき男は、「そんなに言うなら、25%安くする。それでいいだろう」とぶっきらぼうに答えた。「ちがう!安くしてもらうために言ってるんじゃない。」と言ったが、伝わらなかった。

◆メンツで車は走らない。
 翌年、北京の教育委員会に行く用事があって、表通りから一歩裏の道を走っていた。信号の無い交差点で車が同時に三方からハチ合わせとなった。私達の走っていた道は、左側に川があり、左から来る車は、その川にかかった橋を渡ってくる格好になった。空いていた一方からも車が来てしまい、とうとう四方から詰まって、身動きが取れなくなった。動けなくなった車は、それぞれただ「プップー、プップー」と警笛を鳴らすだけ。「時間も間に合わないし、この状況を打開するのは交通整理しかない」と判断した私は外に出た。適切な中国語など知る由もないから、「身振り、手振り」の交通整理となった。やっと渋滞が解け、車に戻った私を、運転手とガイドの女性が拍手で迎えた。私は「これが中国の現状なら、恥ずかしいですよ。みんなが譲り合い、相手の気持ちを思いやることができないなら、この国は何時か破綻しますよ」と言ってやった。2人はうなだれた。

◆リニアモーターカーはすごいのか?
 昨年、上海でも同じことに遭遇した。私の乗ったマイクロと女性運転手のトラックとが、にらみ合って動かなくなった。空港から市内に向かうメインロードでだ。T字路の左折で何でもない所だ。両者がにらみ合ったために、前後に渋滞が起きた。どちらも譲らず、時間だけが過ぎたため、「いい加減にしなさい!」と私が怒った。その私の言葉をガイドが運転手に伝え、仕方なしにこちらが折れた。隣に、建設が終り、まもなく走ると大宣伝のリニアモーターカーの設備が見えた。「あんた達は、こんなもの走らせる資格は無いネ」と言った私に、彼らは下を向いた。

◆ブーイングか大歓声か。
 今年、スイスを訪れた観光客は中国人が日本人を上回ったと聞く。15億人の大きなうねり。経済的にも裕福になって来た中国人。ところがマナーは最悪という。夜中までロビーで大声を上げ、はしゃぎまわる。バイキング形式の食事などでは奪い合い、汚して片づけないという。もちろんすべての中国人がそうだなんていうつもりはない。欧米人は、日本人なのか中国人なのか区別がつかないというので、そんな時、いつも私は「I'm not Chinese! I'm Japanese」という。それは中国人を蔑視したり批難するものではない。「自己中心的ではなく、他人を思いやる気持ちや、譲り合う気持ちを育てて欲しい」と願うからだ。かつて日本人の旅行者も批難されたこともあった。
 その批難や指摘が今の日本を作った。日本だって様々な課題はある。しかし、次のオリンピックまでに中国の人たちにはフェアなスポーツマンシップを養っていて欲しいと思う。ブーイングではない大歓声の中で、日の丸の上がることを私は期待したい。

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