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2004年11月
いじめバトルロワイヤル
学園長 荒井裕司

◆学校で何が起きているのか。
 最近私に寄せられた小6の女の子の次のような手記がある。

 「今日も私にとって辛い一日が始まる。私は学校という名の憎しみに満ちた戦場に、こうして毎日飛び出して行くのだ。やすらぎも休息もない地獄の場に。(中略)校門をくぐると昨日まで私の人権を奪った友人がいる。みんなは私を操り人形のように扱う。そして私はそんな奴等とまた対面して苦痛を味わうのだ。(後略)」

 バトルロワイヤル(いじめの生き残り戦争)の言葉は、福岡の小6の女生徒に使われた。あの衝撃的な殺人事件は記憶に新しい。日本中が震撼したのは、加害者も被害者も小6の女生徒によるものだからだ。青少年の犯罪の深刻化と低年齢化はそのつど、子どもたちを取り巻く世界がこんなになっているのかと知らされる。大人は事件が起きてとっさに、それぞれの子ども時代を思い浮かべて比較してしまう。今の子どもたちの状況が情報としてインプットされていないから、余計にそのギャップが大きなものになる。今、子どもたちはどうなっているのか?学校では、何が起きているのか。

◆いじめは本当に減ったのか?
 今夏、文科省が出した資料がある。小中学校におけるいじめの件数の資料だ。(資料@)10年前に突然増えて、この7年間は減少し、ほぼ横ばい状態だ。学校内におけるいじめの減少に、我々教育関係者や世の大人は胸をなでおろす。しかし、本当に安心していいのだろうか。私には全く納得がいかない。なぜなら、次の資料2を見て欲しい。同時に発表された小中学校における暴力事件の発生の件数の推移だ。この10年間でほぼ6倍にもなっている。

 学校内での暴力事件が増えているということはどんなことなのか。生徒同士の勢力争いのようなことが起きているのだろうか。あるいは生徒と教員のぶつかり合いが増えているのだろうか?いずれにしても、この増加は異常といえる。この数字の推移から、次のようなことが考えられる。

  1. 学校が荒れている。
  2. 先生と生徒の信頼関係がうすれている。
  3. 家庭と学校、それに生徒の関係がうまくいっていない。

 しかし、最も多いのは生徒同士のトラブルや暴力行為なのだろうか。それなら、暴力事件に関わらない子供たちは、その現場で何を感じているのか。そのとばっちりを受けないでいられるのだろうか。

 このような暴力事件の増加は良い結果にはつながらない。どんな形の暴力事件もそこには力関係がある。とするなら、「いじめ」の因果関係があって当然と思える。前述の資料1.2.では、暴力事件が大幅に増えて、いじめが減少するという逆の現象になっている。不自然すぎて奇妙なのだ。

◆いじめをどう考えるか。
 いじめが悪いこととは誰もが知っている。それならなぜこんなにも多く起こるのか。人間には、それぞれ個別の感性があり感情がある。情報量の多い現代では多様な価値観も生まれる。当然、意見の対立や感情の行き違い、勘違い、ジェラシーだって起こる。トラブルになることだってすごく多い。学校の生活でも、全く同じようなことが当然のように起きる。ましてまだ社会経験や生活体験、人間関係の対応の術をしらない未発達状態の子どもたちは、トラブルやケンカの収め方もわからない。ストレートに感情をぶつけ合い、相手の立場を考えることもなく、すぐに言葉で刺したりする。凶器を使ったりする。そうした感情のもつれが裏にかくれたり、陰湿になって、いじめになっていってしまう。

 学校は、小さなトラブルが毎日たくさん起こるところと定義することもできる。それは、ごく当たり前のことで、子どもたちの成長のきっかけだったり、糧だったり、自我の発達や自立の要素だったりする。一般の大人や保護者は、平穏で何も問題が起こらないのが学校だと思っているとしたら、それは間違いといえる。感情を押し殺したり、行動を制限したりするところに、楽しさや自由な発想は生まれて来ない。「ただひたすら勉強だけをする場」が学校なら、ロボットか人形のような人間しか生まれて来ない。いじめの発生はごく当たり前の生活土壌の中にある。だとすれば、小さなトラブルや感情のぶつかり合いが起きる前に、その準備や対応の仕方が教えられていることが望ましい。「いじめはどんな経緯で起こるのか。いじめはどんなところにも起こる可能性がある。受け取る側の気持ちによって変わってくる。いじめでなくてもいじめになってしまうこと。いじめにあった時の気持ちや辛さ淋しさはどんなだろう。いじめを見たらどうしたらいいのか。」などを話し合ったらいい。話し合いを重ねていっていじめをする側、される側からとらえたり、全体的に見るようにする。これだけで理解が進む。いじめが発生した時それを知った親が大きく反応して騒ぎ立てたりすると、かえって大きな溝を作ったり、収めようがなくなってしまうこともある。保護者にも理解を得たり信頼し合う関係も大事だ。

◆成長を喜び合う。
 文科省の資料1のデーターは各学校から集まったデーターで作られる。「いじめ」は「小中学校では絶対起きてはいけないもの」と理解されているから、本当のデーターが資料Aの暴力事件として扱われたり、計上されていないなんてことはないだろうか。不登校問題の対応に地方自治体が数値目標を挙げてそれを発表していたことを思い出す。数字やデーターを減らすことが問題ではなく、きちんと対応すること、そして実行に移すことが大事なのだ。その結果としての数字なら納得がいく。
 いじめは、子どもたちの未発達の未熟な生活土壌の中から生まれる。だとするなら成長するのに必要な、大事な要素がいっぱいの土壌を作ってやればいい。社会も学校も家庭も子ども達の元気な笑顔を見ることが一番の幸せなのだから。

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