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2005年8,9月
国会議員がやって来た!
学園長 荒井裕司

◆日本には行きたくない。
 夏休みということもあって普段会えない人たちとも会う機会が多かった。いろいろな情報を得たが、ヨーロッパで仕事をする友人たちからはショッキングな話を聞いた。ヨーロッパ人たちの中には、このごろ「日本には行きたくない」という人が結構多いという。「え、なぜ?」私は思わず尋ねてしまった。「そうなんですよ、私も思わず同じように聞いてしまったんです。」彼女はそう言って話をはじめた。

 今やITの時代、世界で起こるニュースは瞬時のうちに世界をかけめぐる。それは思想統制や言論の自由のない一部の国を除いて、あたり前のことと言える。

 ITで配信する側がいかに客観的に情報を捉え、また、それをそれぞれの配信先が、どのような視点で見るかによって、かなりの差がでてくる。同じニュースでも正反対の方向を向いていたりする。判断する側もしっかりとした判断基準をもたなければことの真実は見えない。それにしてもヨーロッパ人達は、なぜ日本には行きたくないというのだろうか?

◆日本は変だ。
 日本に行きたくないというヨーロッパ人たちも、日本の美しさは良く知っているという。富士山をはじめとする山や自然や緑の美しさ、それに歴史に裏づけされた深い芸術文化、仏教を中心とする東洋的思想の不思議さ、更に車や精密機械などに代表される技術工業力の高さ。そんな彼らが何故日本に行きたくないというのか。友人は聞いたという。「あっ、そうか!地震があるからですか?」と。

 彼らは首を振ったという。「日本人が理解できなく、怖い」のだという。もっと別な言い方をすると、「異常だ」という。「日本人のどこが異常なのですか?」の問いに重い口を開いて言ったという。「どこの国にも殺人事件はあります。テロリストによるテロも世界中にあります。戦争も各地で起きていて尊い人命が失われています。このことはとても悲しく、人類のもっとも重要な課題です。ヨーロッパにも殺人事件は時々起こります。それは日本の一部の事件と似ています。ところが、日本では、私たちには考えられない殺人事件が起こっています。」「それはどんな事件ですか?」と尋ねると、「大人や若者たちが、子どもを殺すことです。こちらにだって猟奇的な事件もあります。だけど、大人が子どもをというのは少ないんです」

 確かに現在の日本は異常と言える。もう慣れっこになって「またか?」といってしまって流してしまうことも多いが、よくよく考えてみると「本当にこのままで日本は大丈夫か」と思われるような殺人事件や凶悪事件が続く。確かに言われてみると大人や若者が子どもを殺すような事件も多いのだ。このことはヨーロッパでは絶対許されないことで、なおかつあり得ないことなのだという。

◆国会議員たちがやって来た。
 まだ猛暑の続く中、真夏のぶり返しのような衆議院の選挙が終わった。現与党の圧勝で幕が閉じられた。宴のあとというのか、何とも言えない空気が日本全体を包んでいる。もちろん教育の場に政治や宗教を持ち込むつもりはない。様々な方向性を持った政治家たちが、トータルで日本の舵とりをしてもらうことが政治だと私は思う。そういえば、十数年前、この学校ができて間もないころ、超党派の国会議員4〜5名に協力を得て、文科省に直談判に行ったことがある。我々のような民間の教育施設に通う生徒たちに「学割の支給を」と陳情に行った時のことだ。各党の議員たちは、私達のことを真剣に考えてくれ、訴えてくれた。その様子は一部のマスコミでも報じられた。お陰でその後、学割が許可された。このことは今でも感謝をしている。

 この7月には、十数人の国会議員が、この学園を見学にやって来た。見学後にディスカッションの場が設定され、超党派の議員たちからは疑問や質問が出された。全員がこうした学校の必要性を理解していただき、また学園の実践に対して、すばらしいとの評価もいただいた。最後に同行していた文科省の役人に対してこのような学校へ「何らかの支援をする方向を考えてやって欲しい」とまで言っていただいた。その数日後、あの日同行して来た文科省の役人たちが訪ねて来てくれて「現状をよく把握して、どんな支援ができるか、また必要なのか」と話し合うこともできた。

 今年も海外からの教育関係者の団体の視察が多かった。しかし、日本の国会議員の団体の視察は素直にうれしい。私たちの実践が国を動かす中枢に理解してもらうことで、新しい教育の道が開けると思えるからだ。それにしても、少なくとも私達は一歩も二歩も前を歩いていると自負している。

◆それぞれの秋
 今年は仲秋の満月を見ることができて、久々に嬉しかった。今までは、台風やら秋の長雨でなかなか見ることが出来ない年が続いていたからだ。中国や台湾、韓国から留学している多くの若者たちは、この日のために帰国するという。「家族と一緒に食事をするためだ」というのがその理由だ。昔からの風習といえばそれまでだが、「家族」という絆は日本とは比べものにならない位に強い。日本でも「お団子」をつくり、供えたあとは家族で食べるという風習は残っている。しかし、この日のために遠方に離れて暮らす学生達や独立した社会人たちは実家に帰ることは少ないだろう。

 ただ今年は敬老の日と重なったことで、久々に顔を合わせた家族も多かっただろう。顔を合わせれば嬉しいし、家族の絆は深まる。核家族化が進む中で、違った世代がそれぞれの生き方を認め合ったり絆を深めることは、とても大事だ。日本人の心は、四季の様々な行事や伝統文化の中で、人と関わり育てられていくものと確信している。

 ヨーロッパ人の中でとりざたされる「日本人は奇妙だ」といった考えを、あの国会議員たちにも知らせたい。山積する諸問題もあるだろうが、このことはもっとも大事だと思える。何十年か前、アインシュタインが日本へ来た時、「この国が世界を救う」と言ったという。私達は自信をもって、この国の文化や心を育て、後世につなげていきたい。

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