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2006年5月
台湾、日本、そして宇宙のエネルギー
学園長 荒井裕司

◆台湾修学旅行
 私は今、台湾にいる。修学旅行の付き添いで子どもたちと生活をともにしている。日ごろふれ合う機会が少ないからとても嬉しい。
「なぜ修学旅行は台湾なんですか?」と聞かれることも多い。「学ぶところが多い」からである。中国に何度も行った。超優秀校しか交流をさせないから、内容的にもメンツ重視で実が薄い。韓国は熱い心をもって歓迎してくれるが、田舎の方に行くと反日感情が残っていたりして、「ドキッ」とさせられる。ホームステイをするため、少し心配になる。ところが台湾は文句なし、本心から熱烈な歓迎をしてくれる。ある高校では、4000人余りの高校生が一同に集まって歓迎式をやってくれる。バトンガールの先導、吹奏楽団の演奏。それに様々な演舞が次々と続く。まだ眠気覚めやらぬ生徒たちは、その熱狂ぶりに、どうしていいのか分からなくなる。式が終了して各教室に入ってから、やっと自分を取り戻していく。クラス単位の様々なもてなし。用意されたジュースやお菓子、果物などを食べながらゲームをしたり、歌を歌ったりして、気持ちが溶け合っていく。私達学園の子どもたちは、様々な状況にあった子どもたちが多い。ふだんは学校に来れていない子もいる。人と関わりあうのが苦手な子もいる。でも、どんな子たちにも台湾の人たちは優しいのだ。みんながキンキキッズやX6のように歓迎されるのだ。気恥ずかしさが笑顔に変わり、はじけるようになっていく。
 次の学校の歓迎ぶりも子どもたちの想像を超えていたに違いない。正面玄関では、コーラス隊が日本の歌での出迎え、更に全国大会で優勝したというバトンダンスの演舞。講堂に入っての式典。この日のためにこの地区出身の国会議員や県会議員、地区の各役員にPTAの役員などまでがお祝いにかけつける。バイオリンの演奏が終わったあとには、東京国際学園の校歌が合唱団によって歌われた。私も生徒たちもこれには驚いた。このきめ細かい配慮に脱帽。この日も34度という暑さだったが、その暑さの中、生徒たちは“トウモロコシ”や“やきイモ”を焼いてみんなに配ってもくれた。ただ、頭の下がる思いだ。「生徒たちは何を感じただろうか?」今だかつて、こんなに熱く自分が迎え入れられたことがあっただろうか。帰りのバスの中、「俺はまた必ずプライベートでやってくる」と言い切った生徒の言葉に全てが込められていた。

◆宇宙からのエネルギー
 4月20日のさくら国際高校の式典は無事終わった。たくさんの人たちに参加してもらい、また多くの人に応援メッセージをもらうことができ感謝、感謝だ。その中に、映画監督の大林宣彦さんからのものがあった。直筆で、原稿用紙に5枚ものメッセージは、小説の出だしのようだ。「上田のあの学校は、宇宙からのエネルギーが入ってくる唯一の学校です。…中略…さくら国際高校がすばらしい学校になるよう応援していきます。がんばって下さい」人間は大宇宙を中心に大きな自然の摂理の中で生きているし、生かされてもいる。その大自然のエネルギーが流れ込むところが、さくら国際だと言ってくれている。何とうれしいことだろう。大林監督は今までの私達の実践、そして「さくら国際」の名前の由来も併せて理解して、そんな言葉で応援してくれたのだろう。不登校やひきこもり、軽度発達障害の子どもたちとも深くかかわるにつけて、「なぜこのすばらしい子どもたちや可能性のある子どもたちが、社会悪のように扱われるのか、こうした子どもたちが生きにくくさせた社会や価値観が、社会悪ではないかと思う。合理性が幅をきかす世の中で、ガンとして自己主張をし、闘い続けて来たのがこの子どもたちだとも言える。この子たちは、誠実であり、繊細であり、優しく忍耐強く、“卑劣なイジメ”などには徹底して抵抗するような正義感を持ち合わせている。だから、この子どもたちの桜を咲かせてやりたい。「そのためには学校だけがその責を負うのではなく、年代や職業を越え、また地域の様々な人たちの力を借りて、教育の新しいシステムを作ろう。」これがさくら国際の教育の本質なのだ。宇宙からのエネルギーも加わったらすばらしい桜はきっと咲くはずだ。

◆拝啓、藤原正彦様
 尊敬する藤原先生。ベストセラーの「国家の品格」と「この国のけじめ」を読ませて頂きました。私の大好きな作家、新田次郎の息子であること。それにブックカバーの「この人に文科大臣をやってもらいたい」のコピーにグラッときたこと。パラパラとめくった中に、「日本も世界も政治や経済、社会と全面的に荒廃が進んでいる。これを救うには武士道精神による普遍的価値を創造するしかない。この武士道精神の象徴が桜の花である」という一文を見つけたこと。思わず2冊、まとめ買いしたのです。大の男でも2冊まとめて買うのにはかなりの勇気がいりますからネ。先生が本文の中で奥様(藤原てい)とのやりとりを書かれているように、どこの家でも財布のヒモは“ギュっ”としめられていますから…。それにしても、私と何と似ていることか。餓鬼大将だったこと。不細工な顔や短い手足。それでいて今まで会った女性たちが、「優しそうな人ですネ」と言ってくれたことを私に好意をもっていてくれたと勘違いしていたこと。「優しい人ネ」は、「ほめようのない男」と同義語だったなんて。奥様はそれにしても「じっと見ていると具合の悪くなる顔」と評されたようですネ。それは言い過ぎですよ。私の女房はそこまでは言いません。姿形の似ているのは喜びたくはありませんが、「弱気を助け強きを挫く」の精神は私も負けてはいません。金銭至上主義や合理性ばかりを求める社会のシステムの中で、教育は荒廃し、子供たちは悩み苦しみ出しました。この子たちのための学校が必要で、教育制度の真の改革が必要と文科省にも噛みつきました。昨年も、「見学したい」という要請に、「今まで放っておいて今更来る必要はない!」と断ったこともありました。しかし、その教育改革も精神的支柱が必要なのですよネ。それは義・勇・仁をもって立派な教育を子どもたちに施し、立派な日本人をつくり、彼らに再生を託すということですね。この計は30年、50年の時間がかかります。私達も「青少年凶悪犯罪の増加」や「合理主義の社会のシステムの中で苦しむ子どもたち」を放っておけず、何とかしなければならないという思いで、新しい高校を作りました。今、苦しむ子どもたちを救うことに加え、長期的な改革も視野に入れています。知恵の宝庫である地域のさまざまな人たちやNPO法人などのみんなの力を借りて学校を運営しようというものです。日本の文化や伝統も守り育てる学校として、その名前も「さくら国際高校」。ピッタリですよネ。藤原先生にも是非注目して頂き、できれば見学においで下さい。そして感想も教えて頂きたいのです。

◆恋する乙女。
 修学旅行の最終日は、東南旅行社の楊さんの講演。題は「台湾から見た中国」。台湾海峡の向こう側にミサイルを並べ、片一方では「台湾は中国の一部」といい続ける中国。確かに原住民以外は中国大陸からやって来た中華民族に違いはないが、その歴史や文化や生活様式もだいぶ変わってきている。特に日本の統治下で、その影響は大きい。公正さ、誠実さ、真面目さ、粘り強さ、優しさ、寛大さなどは、日本人に近くなっているようだ。今、中国との関係は、政治の部分は除いて経済的には非常に深いつながりとなってはいるだろう。しかし私は、春暁のガス田のように、「いつの間にか台湾は中国になっていた」などということが起こらないように祈っている。大国であろうと小国であろうと一つの独立した国家であれば対等に物を言い、対等に交渉ができる。すばらしい文化を育てつつある台湾は独立すべきだと思い続けている。楊さんの講演もそんなところに落ち着いてはいた。しかし悩みは簡単には帰結しないところだ。
 旅行中、学園の女子生徒から、「男の子とうまくつき合う方法を教えて下さい」と質問される。「憧れが全ての時は相手のことはなかなか分からないが、つき合いが進んで来て、相手が少し分かってくるようになると、それに従ってむずかしくなってくるのさ。だから男の人とうまくつき合うということは、自分の生き方や考え方をしっかりもって、相手の考え方や気持ちも受け入れながら、共通する部分を大切にすることだネ」と優良解答をする。多くの経験がある訳では無いが、人と人、国と国とのつき合い方、これがうまくいったら戦争もないし、夫婦ゲンカだって無くなる。藤原さんのような人だって「夫婦ゲンカ」はしょっちゅうのようだ。なかなかむずかしいことなのだ。

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