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2006年10月
秋の野山のカンタービレ
学園長 荒井裕司

◆のだめカンタービレ
 最近このマンガにはまっている。東京駅の書店で思わず手に取ったら、やみつきになった。オーケストラの世界に住む若い2人の青春グラフティー。こんなに詳しい楽器のパーツの紹介なども今までにないパターンだ。堅いクラシックの世界の人間模様も、オーケストラが奏でる楽曲のように楽しませてくれる。主人公の“のだめ”こと「野田めぐみ」は、どこにでもいる明るく元気で、ドジでおっちょこちょいの女の子。この女の子が、実に魅力的なのだ。片や神童かと言われるほどの実力と才能を兼ね備えたイケメンの指揮者。この2人が物語を作り出していく。
 私がものおぼえのついたころから漫画ブームは続いている。アニメと並んで日本を代表する文化となっているのは周知の事実だ。マンガ家は絵がうまいだけではなくて、ユーモアのセンスやストーリーの構成力も要求される。人気マンガ家になるには並大抵ではないが、「好き」でさえあれば、いつか可能性は広がる。

◆「ハッピーバースディ」はオーケストラで。
 この9月1日。松本で開催された「サイトウキネンフェスティバル」でオーケストラを聞くチャンスに恵まれた。チケットの販売時期は、テントが並び、寝泊りして求める人が出るという。コンサートの2〜3日前に友人から「チケットが手に入ったから一緒に行かない?」と声がかかった。「オフコース!」予定も何もあったもんじゃない。二つ返事でOKだ。
 初秋の夕暮れ、いつもは時間ギリギリの私も、1時間前には会場に着いていた。正装でぞくぞくと集まってくるファンの顔はみな、「この日に参加できる喜び」に溢れている。入場して来る車のナンバーは、東京、千葉、埼玉、神奈川、更には名古屋や大阪。いかにこのコンサートが人気があるかがわかる。私も、こんな大きな音楽祭は久し振りだ。
 オーケストラが始まると、その素晴らしさにのみ込まれた。腹の底から“不思議な興奮”が湧き上がってくる。楽器にはまるで音痴の私だが、それぞれのパーツが見事に動いて組み合わさっていくのが分かる。少しでも音が悪かったり、タイミングがずれたりしたら、全てがバランスを失っていくに違いない。ハーモニーの大切さを身をもって感じて、言い知れぬ感動で終わった。会場は興奮の渦。私も「フゥー」と一息ついた。その瞬間、拍手が鳴り響いた。「アンコール」だ。小澤征爾氏が、壇上にかけ上がると、指揮者のタクトが動き出した。何とそれは「ハッピーバースディ」だった。この日は、小澤氏の誕生日だという。少年のようにテレながら首をすくめる彼に、全員声を揃えての大合唱。アンコールは会場と一体となった「♪ハッピーバースディー」で終わった。この日の楽しい最終章に、みんなウキウキ気分で帰ることになった。

◆個性は努力でつくられる。
 プロ野球の公式戦が終わった。日ハムの活躍が光ったが、プレーオフは今一つだったし、セントラルにいたっては、盛り上がるところが無かった。昨年のロッテのようにファンでなくても楽しめる場面はなかった。
 そんな中で、現役を引退した選手たちがいる。毎年のことだが、“いざ引退”というと昨日まで敵のチームにいた選手さえも「ありがとう」と感謝したくなる。今年は中日の川相や楽天の飯田などだ。スポーツ選手の引退は、体力的にも年齢的にも必ずやってくる。仕方のないことだが、彼らに共通するのは個性的だったこと、そして、体格には恵まれていなかったことだ。ただひたすら努力と精進を重ねて一流選手の仲間入りを果たした。特に、川相選手は、来る日も来る日もバントの練習をし、世界記録を持つほどの超一流となって、プロ野球史上にその名を残した。また、阪神の引退選手には片岡がいる。彼はパリーグの時代から目黒の施設の子どもたちを応援し続けて来た。晩年はホームランの数も少なくなってきたが、そこには「宝物」ともいえるバットやグローブが飾られ、今でも毎日子どもたちを励ましている。プロ野球は優勝を目指すためチームワークが求められ、役割分担が決められる。どこかが機能しなくなったり、破綻すると、そのチームは力を失う。その中で個性を磨き、自分をアピールすることは、かなり難しい。プレッシャーの中、身も心も限界まで挑戦した彼らに、拍手を送りたい。

◆自然はすごい!
 「都会の子どもたちのために山を歩かせたい」という思いが昔からあった。春の山もいいが秋の山はもっといい。秋は紅葉があり、様々な実りがある。ぶどうにも何種類かあるし、キウイの原種のような「猿なし」がある。山栗や山くるみ、山梨もある。赤や紫に色づいた「よつづみ」、「こんぱら」といわれる木の実やアケビもいっぱいなっている。更に各種の茸も出てくる。しかし今の季節は、「止め山」といって、マツタケや他の茸の収穫のために、入山禁止となっている。地元の友人たちに相談したら、「俺たちが何とかする」といってくれて、入札で山の権利を取得してくれた。小学校時代、毎日のように暗くなるまで遊び、休みのたびに山に登った仲間たちの計らいだ。
 京都の丹羽と並んで日本の代表的なマツタケの産地と言われている上田の地域だが、最近は収穫量が減り、“幻のマツタケ産地”とまで言われるようになってしまった。ところが今年は10年に一度の豊作だという。夏の雨、9月の雨、そしてその間の日照時間と温度がうまくかみ合った。地球規模の自然の摂理、奇跡に近い自然のハーモニーが、この貴重な茸を生み出している。
 どこのマツタケ産地でも、素人は山に入れないというのが常識だ。急斜面もあったり、枯れ落ちた松葉で滑ったりのマツタケ山だったが、参加した子どもたちはどんな感想を持ったことだろう。頂上で食べたマツタケのご飯には、そんな自然界からのメッセージも込められていた。

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