東京国際学園高等部
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2006年11月
親の思い子の思い そしていじめを考える。
学園長 荒井裕司

◆さくら国際見学ツアー
 今年、11月25日(土)。保護者の皆様の見学ツアーが行われた。晩秋の信州はキリリと晴れわたり真っ青な空。右端に初冠雪の浅間山。その左に菅平から上越につながる山々。更に美ヶ原、霧が峰。紅葉はさすがにその最盛期は過ぎたものの黄色や紅い色をまだ残して広がっている。
 子どもたちがスクーリングで体験した活動を味わってもらいたいと、東山農園でのリンゴ狩り、きのこてんこ盛りのレストラン深山(しんざん)での食事。地元産のマツタケや朝鮮人参の味はいかがだったでしょうか?
 メインのさくら国際の校舎は、どのように眼に映りましたか。10年間、県や行政と闘い続けて地元の人たちが守り抜いてくれた学校。映画人や文化人がこよなく愛してくれる趣き。それらはきっと伝わったことでしょう。
 帰り際に寄った「無言館」(戦没画学生の絵を集めた日本唯一の美術館)。更に前山寺の未完の塔。ここで私はいつも「救われた思い」になります。完成されていない未熟な自分と重なるからでしょうか。
 最後は「さくら国際」の応援団長と自負する無言館館主の窪島誠一郎さんの運営する信濃デッサン館でのコーヒータイム。つるべ落としで暗くなった山の山頂から見る塩田盆地の夜景。「あ、電車が走ってる!」の声。丸窓電車と言われ、別所温泉をつなぐローカル線。窓一杯に灯りをともして走っていく。あの灯りの行進は、宮崎駿雄監督の「千と千尋の神隠し」で、水中を走る電車のモデルとなった。この地域の伝説「竜の子太郎」がハクになり、大きな湯屋は別所の温泉旅館がモデルになった。アカデミー賞に輝いたあの映画のワンシーンが蘇る。
 かくしてバスは真っ暗となった、「信州の学海」を発ち、東京に向かっていきました。人の思いはそれぞれ、感じ方もそれぞれ。でも秋の一日、私にはとても楽しく充実した一日でした。役員の皆様の心遣いにも感謝しながら、バスを見送らせて頂きました。

◆親の心はどこまでも
 ツアーの翌朝、そのアクシデントは起きた。早朝6時30分。まだ浅い眠りの中にあった私は「裕司さん!裕司さん!」の義姉の声で起こされた。私はさくら国際での説明会のために実家に泊まっていた。あわてて飛び起きた私は玄関先でうずくまる母と、それをかかえる義姉の姿を見つけた。走りながら「どうしたの!」という私の問いに義姉は「お義母さんが倒れたの!」母は薄れていく意識の中で、「こんなになってイヤだイヤだ」と言い続ける。抱きかかえる私がわかったのか、言葉を私に向けた。「裕司、寒いから早くはん天を着ろ!」「こんなことになったから、仕事に行けなくなる。仕事に行け!」。もう11月の末、信州の冬は始まっていた。その朝は急に冷え、あたり一面真っ白な霜がおりていた。救急車で運ばれた病室の待合室で、「重篤ではない」旨を知らされて胸をなでおろした。ICUでもまだ「仕事に行け!」と言う母。意識が薄くなり、失禁する中でも、我が子を守ろうとする母の思いに涙が湧いた。成長期の戸惑いや不安で、悩む子どもを前に、どんな深い思いの保護者の皆さんかと思うと、背すじが伸びた。

◆いじめへの提言
○いじめられている子どもたちへ
 理屈はありません。どんなことがあっても死んではいけないのです。人類が始まってから続いてきた命のつながり。自分一人のものではないのです。自分が受けたり感じたりするいじめについて、他の人はどう感じるか勇気を出して尋ねてみてください。人によってだいぶちがうことがわかります。他人の話を聞くことで元気が出てきます。
○いじめている子どもたちへ
 いじめは受け取る側の感じ方で起こります。「いじめている側」は自分はいじめているという意識が無いといわれます。人と人とのコミュニケーションの行きちがいで、とんでもなく恐ろしいことになるのです。故意でいじめをする。これは論外です。相手の気持ちを考えてやれる自分を育てて欲しいです。
○親・保護者の皆さんへ
 子どもたちには、学習面ばかりではなく、多くの学びや活動の場を作って「考えさせて」ください。ゲームを減らし、本をたくさん読ませ、社会や地域の人たちと関わることを増やし、様々な個性や生き方のあることを教えてください。そして例え、どんな状況におちいったとしても、「解決の道はあること」、「あきらめないこと」も教えてください。
○学校関係者の方々へ
 子どもたちが自らの命を断つなどということが継続的に起きて、学校の責任も問われています。学校だけの責任ではないにしろ、学校が複合的にかかえる問題も多いはずです。今までのワクを外し、子どもたちのためにどう学校のシステムを変えるかを一緒に考えませんか。一つ一つの小さな言動に自信を失い、おびえて本来の教育が実践できなくなってしまうとしたら悲劇です。

◆図書館一つ分の知恵
 アメリカの田舎でのこと。村の中心を流れる川は、水量も多く、流れも早い。毎年両岸からあやまって落ちて尊い命を失う子もいる。村の集会ではいつもそのことが大事な議題となっていた。若い親たちは、早く川に高いフェンスをめぐらせることを提案し、川を安全に渡るために、フェンス付きの橋を望んで、それが了解を得られつつあった。そのとき、長老が立ち上がって言った。「子どもたちを守ることは大切だ。だが、こんな川は落ちても泳いで渡り切れるはずだ。我々の村の未来を託す子どもたちには、渡り切れる体力や技術、そして勇気を与えてやることの方が大事ではないか。」この老人の提案は採用され、村から溺れて死ぬ子どもは消えたという。
 人は生きていく中に、苦しいこと、辛いこと、悲しいことがたくさんあり、大人の社会に「いじめ」だってある。子どもたちには「いじめ」には屈しない心の広さと強さとそれらをはねのける勇気と元気を育ててもらいたい。
 私達大人は、人生の楽しさや喜びも教えながら図書館一つ分の知恵を授けていきましょう。
※アフリカでは、お年寄りの知恵は「図書館一つ分の知恵」といい尊敬します

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