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2007年11月
里柿、湯たんぽ、1つ星
学園長 荒井裕司

◆ミシュランの1つ星
 このところ北の国への出張が増えた。学校に訪問させてもらったり、講演をする機会をいただいたりもする。秋も深まり、紅葉は行く度にその色を変え、表情も豊かになる。それもうれしいが、私は別なところにも楽しみをみつけていく。まずはその土地の食文化に触れることだ。一番手っ取り早いのは、その土地の商店街で店主に聞くことだ。ビジネスホテルの小さな一室に泊まる淋しさもかなり解消される。酒も飲まず、ほとんどベジタリアンの私だから食べるものも限られているが、入った店で主(あるじ)と話をすることで友だちができたりもする。先日入った地元の食堂では、梅干の天ぷらを食べた。旬の野菜の天ぷらを頼んだ中に入っていたものだが、最初は何だかわからなかった。口の中で溶けるように広がる不思議な食感。もちろん酸っぱくはなく、かえって甘い味がする。「あれ?種がある。これって梅干ですか?」と尋ねると、「どうですか?おいしいでしょう?」と言う。「びっくりしましたョ。でも美味ですネ」祖父が考えて作ったのが初めで、今は大人気だという。しかし、揚げるまでに何週間も時間が必要だという。漬けてある梅干をそのまま使うような単純なものではないようだ。それにしても忘れられない素朴な味だ。今はやりのミシュランはどう評価する?
「うめ星1つ!」 ハハハハ〜。そうくると思ったでしょ。

◆黒ゴマの柿
 もう一つの楽しみはその土地の「道の駅」に立ち寄ることだ。今の季節はキノコやリンゴや野菜が並んでいて安いのに驚く。私の大好物は「柿」だからつい買ってしまう。どの位の種類があるのかは知らないが、それぞれ形や大きさの違った柿が売られている。どの柿もうまいのだ。新潟の田舎で買った柿は大粒で12〜13個も入っていて120円だった。ゴマが真っ黒に入っていて思わずかじりついた。飯山の柿は小ぶりだったが20個も入っていて100円だった。売店の女性に「すごく安いですネ」と言うと、「少し渋いのもあるかも知れない。これもサービスしてあげる。」と言って別の柿を4個くれた。これも実にうまかった。濃厚な甘さが広がった。至福の時が仕事の疲れを取ってくれる。富有柿が王様といわれるが、私の味覚の中では真っ黒にゴマの入った里柿がなんたってNo1だ。私の知る限り、里柿に消毒する事はない。自然そのままに実って色づいていく。木が弱いので「樹には登ってはいけない」と子どものころから教えられた。枝は高く伸びて消毒はできない。だから丸ごと自然で安心なのだ。

◆環境を守ろう
 だがこうした地方にも環境汚染は年ごとに進んでいる。10年前に見つかって新聞報道された「タヌキとカモシカのアトピー」のニュースは悲惨な現実といえる。人間の食べ残した残飯を食べたり、消毒液の散布された草木を食べたりした結果のことだ。汚染物質は人間にだって良いはずはない。表面には出ずに体内に蓄積されていくことが怖い。食の安全はどうしたら確保できるのだろうか。昨今の賞味期限の改ざんや産地偽装まで消費者の見えない所に悪がはびこり、ただただ利益追求と経済優先の価値観だけが横行する。私の知り合いのアナウンサーは、ペットボトルのお茶は一切飲まない。「どのような過程で作られているのか見えないからネ」という。持っている水筒には、自ら確認し納得した有機農法のお茶を入れている。そう言えば、私の大学時代、静岡のお茶農家の出身の友人がいた。市販されているお茶は一切飲まなかった。「なぜなの?」と尋ねると、「毎日毎日消毒だらけのお茶が飲めるか」と言った。40年経った今でもその友人の言葉が忘れられない。

◆湯たんぽ万歳!
 この4〜5年前から我が家は湯たんぽ党となった。友人から、「電気毛布や床暖房などは体に良くない。」との助言で湯たんぽに替えたのだ。先日の寒い夜、布団の中に足を入れたら足元がポカポカ。「あっ、湯たんぽが入った。」小さな感動が走る。何とも言えない間接的なぬくもりが伝わってくる。心と体にやさしいのだ。
映画『三丁目の夕日』の続編がまた大人気だという。
愛する人や愛する家族の絆をもう一度考えさせてくれる。あの時代は私の子どもの頃と重なる。
あの頃の全てがすぐれていたという訳ではない。ただ人と自然が優しく、うまく関わっていたように思えて仕方ない。里柿、湯たんぽ、そうそう、ミシュランの1つ星に感謝、感謝。

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