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◆盛岡S高校 今年の8月のことだ。盛岡の子どもから「SOS」があって家庭訪問に行った。8月の東北は祭りのシーズンだが、“盛岡のさんさ祭り”は終っていて、街中灯が消えたようだった。時間に余裕があったため、私立のS高校を訪ねた。この学校には前から興味があり、いつかお訪ねしたいと思っていた。朝、いきなりの電話で単刀直入の申し込み。行きたいと思ったら何としても行ってしまうのが私流の生き方だ。いいか悪いかは別として道の開けることも多いし、友情も生まれたりする。
その学校は盛岡駅からさほど遠くない。うすいオレンジ色の校舎は「あたたかく人を迎える」雰囲気だ。出て来てくれた副校長と教育談議に花が咲き、少し遅れて来た校長も仲間に加わって意気投合。心が一つになった。この学校の大きな特徴は、「子どもたちを数字で評価しない」というところだ。寄宿舎もあり、全国から生徒たちが集まってくる。本当にいいものは偽装しなくたって伝わる。何ら不思議はない。
◆ゴッツい男たち
全国(大げさかな?)をとびまわっていると教育に対してゴッツい理想をかかげて実践している男たちに時々会う。新潟にもいたし、長野県内にも何人かいた。飯山で会った先生は数学者の秋山仁さん似で熱かった。遠方から来た私を「今授業中で、終ると夜中になっちゃうから、明日会いましょうよ」と云う。次の日訪ねると塾内の専用のカウンターに案内してくれて、熱いコーヒーやら食事を用意してくれた。「今のまま、教育も中央集権が強まり、格差が進んだら、地方はもうお手上げだよ。」「都会は教育費が高いし、生活費も高い。そのために親は共稼ぎ。余暇もないし、生活を楽しむ時間もない。教育の地方分権で、大学が地方で機能すると地域の再生も活性化もできるんだけど……。」埼玉で30年近く、すばらしい実践をして来たSさんにも学ばせてもらった。学校は子どもたちを偏差値や数値で評価するところじゃない。「偏差値いくつ以上の生徒は特待生として入学させます」という高等学校の広告を見つけた時には絶句したという。「成績を金で買ってどうするんだ!」と語気も荒い。私が電話で面会を希望したら、どこの高校も私の信頼できる所は無いよ。唯一ここかなというところは、盛岡のS高校だけだネ。「実は私、この夏S高校を訪問して意気投合してエールを交換し合いました。」「何だってー!!」次の日、会う機会をいただき、更にその3日後、学校にやって来てくれた。温厚で思慮深いのに、子どもたちのためには、どんなことも実践してしまうという強さを感じた。何という行動力なのか。
◆心に響くもの
『無言館』は今や上田を代表する観光スポットとなった。どんな美術館なのかも知らずにやって来て、びっくりする人も多いという。戦争で死んだ若い画家たちの遺作を集めたものだ。“信州の学海”といわれ歴史的遺産と文化遺産、そこに学びに集まる人々を温かく迎え、応援するという風土の中で生まれた新しい美術館だ。館主の窪島さんはその著書の中で言っている。「別に反戦平和のためにつくったわけではないし、平和運動の旗を持って活動しているものでもない。ただ、人間が残した絵というもの、絵画というものあるいは彫刻でもいい、あるいは音楽でもいい。人間が造り出した創造物、表現物というものは、平和がなければ存在しない。平和がなければ歌も聞こえないし、絵を見ることもできない。言葉に酔うこともできない。美術というものは平和を訴えるためにあるものではないけれど、平和がなければそこに存在しない。いわば「平和」の「証拠品」とでもいえるもの」「そうした意味での絵とか絵を描く行為はすばらしい。前に立った私達は絵に力づけられ、ものを考え、今日より明日、明日よりあさってと人間として成長していく。その手立てとしての絵画の役割があると思う」
『私の信州・上田紀行〜窪島誠一郎』より
◆応援団も走る
私はお客様をご案内すると、いつも最終案内地として、信濃デッサン館に付帯する喫茶店に行く。夕暮迫る塩田平の夜景が一番好きだからだ。12月の中旬、いつものようにそこを訪れて、「窪島さんはいますか?」と尋ねると「荒井先生、会いたかったよ!」といって出て来てくれた。ニコニコと心から歓迎してくれる。「私も会いたかったですョ」お互い忙しくてなかなか会えないでいた。「ところで、あのネ先生、私も少し役に立っているかもし知れない。」「え、どういうことですか?」「四国の私の知人の息子が、あなたの学校に入学したらしいです」そういえば四国から入学したという話は聞いた。「私は応援団の一員だけど、名前を連ねているだけで、何にも役に立っていないと思っていた。入学する人がいたという事がうれしいんですよ。」「ありがとうございます!」思わず最敬礼。人と人とのつながりはいろんな形がある。パソコンや携帯電話での情報は一瞬のうちに世界を巡る。いいも悪いもだ。人と人とのつながりはゆっくりとしているが、それがいい。年末で忙しいけれどまだまだ人には会いに行こう。
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