東京国際学園高等部
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2008年3月
春や春、涙の春。
学園長 荒井裕司

◆春告鳥(はるつげどり)
 寒くて雪の多い今年の冬は、逃げ足が速かった。急に暖かくなったが、これも地球温暖化のせいか。我が家の春は、鳥たちのさえずりでやってくる。自宅の前には、大きな樹が5〜6本あって、いろんな鳥たちがやってくる。昔からの古い官舎があり、時々手入れにはやって来るが、自然はそのまま残され続けて来た。都心に近いのにキツツキやフクロウ、モズやシジュウカラ、野生化したインコの大群も来る。もちろんスズメも多い。春先になると、ウグイスが毎年やって来る。「ホー ホケキョ!」この鳴き声が聞こえてきた朝、私の眠気は鮮やかに霧散する。「また、今年も来てくれたのか!」いとおしさとうれしさが交叉する。ところが今年は、思わずふき出してしまった。「ホッチケキョ!」寸づまりで、伸びがなく、こっけいなのだ。焦って鳴いているようにも聞こえる。「どうしたの?」鳴いている樹の枝を見つけようとしたが、見つからない。私は少し心配になった。「この鳴き声は個性なんだろうか」「この鳴き声が来年も引き継がれるんだろうか?この鳴き方が一般的な鳴き方になったら情緒がなくなるぞ」「あっ、そうか、急激な春への転換で練習が間に合わなかったんだ。そうしておこう。ウグイスにだってそんなこともあるさ」と決め、自分を納得させた。

◆秘密の花園
 新宿御苑(しんじゅくぎょえん)の奥深く、池の近くに早咲きの桜がある。桜が、この上なく好きな私にとって、ここは一番早い桜見物の場所になる。2月の中旬、沖縄の桜や、河津桜がマスコミにとり上げられるころ、様子を見にそっと1人で行ってみる。四本ある桜は順に咲くようになっているから、本番の桜が咲くまで楽しめる。結構知っている人がいていつ行ってもにぎわっている。カメラマンも多いし、桜の下で弁当を食べる光景も本番の時と変わらない。この桜の他に赤坂の豊川稲荷にも同じころ咲く桜がある。タクシーにのった時、そんな話をしたら、「他にもまだありますよ」と新しい情報をもらった。「ププッ」。記憶力のとんと鈍くなった私だが、この情報はすぐにインプットされた。  桜が大好きだからだけではなく、私が早咲きの桜を見に行くのには「理由」がある。卒業式の壇上から「卒業生」たちの顔と桜の花を重ねてイメージするためだ。みんなに渡した苗木が、咲いた瞬間をしっかり確認したいということだ。

◆卒業式は涙が似合う
  今年も多くの卒業式に出席した。どんな卒業式もそれぞれいい。ただ儀式として形式だけの卒業式は好きではない。子どもたちの学校生活の区切りは、子どもたちの思いや生きて来た証しが、全体に伝わらなければいけない。仕事として行事として学校側が主体で行われるのでは、本当の卒業式ではないからだ。今は『泣かない卒業式』が当たり前だという。でも私たちの卒業式は来賓も保護者ももちろん生徒たちも涙でいっぱいになってしまう。かつて、社会的な価値観に押しつぶされたり、システム化された学校の教育体制や、いじめに傷ついた子どもたち。多くのプレッシャーの中で学校に行かないと決めた子どもたち。小学校、中学校と卒業式に参加しなかった子どもたち。でもようやく自立できる春がやって来て、飛びたてる卒業式がやって来た。万感胸に迫る卒業式。涙がいっぱいになる卒業式。それってほんとうにステキなことだといえる。「この学校が大好きでした」なんて私達を泣かせるような言葉を贈ってくれたみんな。教職員全員、心から思いを伝えたい。「みんな、卒業おめでとう!ありがとう!」と。

◆花粉症ですか?
   卒業式のあと私は駅近くを歩いていた。卒業式が終わっても余韻に浸ることなくまだ仕事が待っていた。キャリーバックを引きながら歩いていた。「先生、こんにちは!」明るく元気な声。ふり向くと私の知人だ。いつも学校を応援してくれるいい仲間だ。「先生どうしたの?花粉症?目の周り、まっ赤っか。」この人はいつも言葉に衣を着せない。そこが大好きだが、今日はちょっとまずい。「そうなんですよ。どうも花粉症がデビューしたみたいですネ」こちらも必死だ。「一気に春が来たから、花粉もいっぱいとんでいるんだよ」ニコニコ笑って彼女は去っていった。思いきり泣いた私の秘密を知ってか知らずか。そうだ、毎年、3月は花粉症になろう。花粉症の人には申し訳ないけど。それもいいや。

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